一首ずつ、日本の情景を集める。
秋の田んぼに立つ小屋。山に干された白い衣。紅葉が流れる川。
腕鍛帳の「詠み草」では、百人一首の一首一首から思い浮かぶ情景を、墨絵調の絵札にしました。和歌と歌人名を添えながら、絵の主役になるのは、その歌が見せてくれる景色です。
天智天皇
持統天皇
在原業平朝臣
実際の絵札に使用している情景の挿絵。
百人一首そのものを初めて知る人には、「百人一首とは? 一首から楽しむ、はじめてのガイド」も用意しました。
日本の風景を入口に、海外の人にも和歌を
日本で広く親しまれている百人一首の読み札には、装束をまとった歌人の姿が描かれています。誰が詠んだ歌なのかを絵で示す形です。
一方で、百人一首を初めて知る海外の人にとって、歌人の名前や肖像だけでは、その一首を身近に感じにくいこともあるのではないか。腕鍛帳の絵札は、そんな思いから生まれました。
天智天皇を知らなくても、田んぼと古い小屋なら思い浮かべられる。持統天皇を知らなくても、風に揺れる白い衣から季節の気配を感じられる。
日本の田園や山、川、暮らしの気配に触れながら、歌の言葉へ近づいていく。絵札が増えるほど、手のひらに小さな日本の情景集が育っていきます。
まず絵に目がとまり、次に「どんな歌なんだろう」と気になる。 その順番でも、百人一首を楽しんでもらえたらと思っています。もちろん、日本語で百人一首に親しんできた人にも、覚えていた言葉の向こうに景色を見つける入口になります。
一首の言葉を、一枚の情景へ
絵札の挿絵は、歌から何を受け取り、何を画面に残すかを考えて制作しています。たとえば、冒頭に並べた三枚には、こんな見方を込めました。
秋の田の ── 田んぼと小屋に近づく
天智天皇の歌からは、秋の田んぼと、粗末な屋根の小屋を描きました。稲穂の向こうに小屋が見えることで、露に濡れる衣の歌が、遠い言葉だけではなく、そこに立ったときの感覚へ近づくように。
春過ぎて ── 白い衣から季節を感じる
持統天皇の歌では、山を背景に干された白い衣を主役にしました。淡い墨の景色に衣の白さを残し、春から夏へ移る気配を眺められる一枚にしています。
ちはやぶる ── 川面に浮かぶ紅葉を見る
在原業平朝臣の歌では、川の流れと紅葉を描きました。歌の「からくれなゐ」を鮮やかな赤で塗りきる代わりに、墨とセピアの濃淡で葉と水を表しています。色は歌の言葉から想像してもらう。その余白も、絵札の楽しみにしたかったところです。
これらは、歌人が実際に見た場所を正確に再現した絵ではありません。歌の言葉や心情を手がかりにした、mikocodeなりの情景の解釈です。
一枚の絵から、歌の意味へ
情景の絵だけで、和歌のすべてが伝わるとは考えていません。恋の歌なら、目に見える風景の奥に、待つ気持ちや会えない時間が隠れていることもあります。
だから腕鍛帳では、一首が完成すると、現代語訳や鑑賞、詠まれた背景も読めるようにしています。解説は日本語と英語で用意しています。
「この絵が好き」から始まって、「こんな気持ちの歌だったんだ」へ。絵と言葉を行き来するうちに、一枚ずつ好きな歌が増えていく。そんなコレクションを目指しました。
毎日の鍛錬が、自分の百人一首になる
腕鍛帳は、iPhoneの前面カメラで腕立て伏せを数えるアプリです。腕立てを一回重ねるごとに、百人一首の文字が一字ずつ綴られていきます。
一首が完成すれば、また一枚、自分の絵札が増える。運動した記録が、眺めて楽しめるものとして残っていきます。
一度にたくさん集めなくても大丈夫。自分のペースで体を動かしながら、少しずつ百首の世界に触れていく楽しみです。
アプリの絵札一覧を見る
絵で味わう百人一首を、手のひらに
和歌の内容を絵に表す試みは、古い百人一首にも見られます。日本かるた文化館が紹介する吉田家旧蔵の歌合せかるたにも、歌人像を使わず、歌意を描いた札が残っています。
腕鍛帳で大切にしたのは、その絵から歌へ近づく楽しみを、今の毎日の中に置くことでした。百人一首をよく知らない人にも、海外の人にも、まずは気になる景色を一枚見つけてもらえたらうれしいです。
掲載した挿絵はアプリで使用しているものです。生成AIを制作に活用しています。
和の情景づくりに興味があれば、和景刻の「静けさ」をつくる考え方もどうぞ。アプリの操作や対応端末については、腕鍛帳のよくある質問にまとめています。